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広島人には絶対に観てほしい
「この世界の片隅に」

2017/3/16 - カルチャー, レビューしぶ

第二次世界大戦中の広島県呉市をメイン舞台にしたアニメ映画「この世界の片隅に」ですがみなさまもうご覧になられましたか?
メディアの冷やかな対応(詳細は割愛…)で公開当初はあまり知られていない作品でしたが、口コミの高評価にメディアも順次腰を上げて来たので作品名は多くの人の知るところになったと思います。
2017年2月時点で興行収入20億円、動員数150万人、累計公開館数300館を突破するなど当初の予想を上回る大ヒットになっています。
辛口レビュワーがしっかりとしたレビューを書くことで有名な映画レビューサイト「みんなのシネマレビュー」でも、高評価第一位の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に次いで、第二位に滑り込むという、このサイトを知る人なら腰を抜かすほどの高評価ぶりです。(ちなみに、以前の高評価第二位は天空の城ラピュタでした)

上映もそろそろ終わりが近づいていると思われるので、「まだ観ていない広島人がいれば絶対に観てほしい」という思いから、だいぶ遅ればせながらラストスパートで紹介です!
「まだ観てないけどもうひと押し背中を押されないかなー」って人に向けて、ちょっと違う視点でおススメさせていただいていますので、ストーリなどに関するおススメが必要でしたら他サイトをご覧いただければ(笑)

一般人の生活の描写が生々しい戦争映画

戦争映画といえば戦争の悲惨さを訴えるものや、プロパガンダ的に英雄をたたえたり過剰にかっこよさを追求するものが多いと思います。
しかし、この作品は「戦時中の一般人がどういう生活をしていたか」というテーマが作品の中心にあると感じられました。
映画の前半は物資がないながらもなんか妙に楽しそうに生活している人々が描かれています。
配給物資がどんどん減っていく描写がありますが、そういう中でも「あるものは何でも工夫して使う」などある種楽しみながら生活しているような描写があります。
この映画は当時の様子を徹底的に調べ、聞いて再現しているそうで当時を知る人は「あの町並みが本当にそのまま再現されていた」「海で仕事するときは本当にああいう格好だった」「あのお店にいた名前も知らない人は当時確かにあんな風貌だった」など、これでもかというほどリアルに再現されているそうです。
映画館にかなりのご年配の方が来られているのもそういった景色を楽しみに来られてるんだろうとももいました。

県外の方にわかるのかな?

広島弁

本作は当然ながら徹底的に広島弁ですが「呉なまり」があるといわれています。
このあたりは私は特に違和感が感じなかったのですが、作品全体に「やねこい」などコテコテの広島弁がじゃんじゃん登場しますのでこれはもう県外の方には予習しておくか雰囲気で察していただくしかないかと!(知らなくても問題ないレベルです)

この作品で称賛したいのは主人公すずの声を担当されたのんさんですね。
話題作りのためにタレントに声をさせて、映画が台無しになっちゃったという作品をいくつか見ていたので観るまではこの人選に漠然とした不安がありました。
しかし、観てびっくり!
想像以上の熱演とクオリティで主人公を愛おしく感じてしまうレベルでした。
広島映画にありがちな「気持ち悪い広島弁」ではなくほんとかわいらしい広島弁でした。
のんさんの声がおっとりとした主人公にあっていたのですが、おっとりだけではなく主人公が感情を爆発させるところはもらい泣きしてしまうほどの熱演でこの人選は正解だったなと!

地名

広島に住んでいる人にとっては違和感なく入り込める広島が再現された世界ですが、「呉」はともかく「江波」「草津」など広島市内に住んでいてももしかしたらぼんやりとしか知らないような地名が出てきます。
鑑賞前に簡単に地名や位置関係を地図で見ておくとよりイメージがわくかもしれませんがこれもまぁ雰囲気で流してもOK!
ただ、鑑賞後にはこれらの土地を知らない方は「位置関係を知りたいから地図を見たい」という衝動に駆られると思います!

人気のポイント

細かすぎる描写(絶賛)

この映画の人気のポイントは、やはり細かすぎる描写でしょう。
当時を知る方にとっては「そうだったね、懐かしいね」の連続でしょうが、知らない自分にとっては「そうだったのか!」「こういう時はそうやってたのか!」という発見の連続でした。
とても細かく作られているので、いくらでも掘り下げて新しい発見を重ねることができるので鑑賞後の考察が加速し、それによりリピーターやファンが増えているという側面があるでしょう。

強力な支援者による魅力の発信

もう一つの人気のポイントは、この映画の資金集めに行われたクラウドファンディングのあり方かと思われます。
制作資金などの一部を一般から調達しましたが、目標金額2160万円に対しておよそ3912万円が集まりました。
3374人の方が支援したこのクラウドファンディングですが、資金集め以上の効果を出していると感じている点があります。
それは、協力者に対するお礼を通して協力者を制作スタッフのような立場にできている点かと思われます。
協力者は制作支援メンバーとしてミーティングに参加できたり、エンドロールに名前が掲載されたりなどすることで「一緒に作った作品」という立場になることもでき、それが作品にとってのより強い支持基盤になっているのではと想像します。
自分が携わった作品が素晴らしいものに仕上がった、これは多くの人に観てもらいたい、そうなると協力者も全力で宣伝して作品の魅力を発信していきますよね!

クラウドファンディングは資金作りが重きに置かれがちですが、こういう協力者をしっかりと増やしていくことというのはとても大切だと思いますし、作品の魅力がしっかりと広がっていたたのも協力者のおかげである面が大きかったのではないでしょうか?

謎の呉愛、呉からみた広島感

広島市内の人が呉の人に対して

「地元愛が異常に強い」
「何があっても呉の家に帰ろうとする」
「勤務先が遠くても呉から通おうとする」

などを不思議に感じるというのをよく聞きますし、呉の方とそういう話題になることもちらほらあります。
しかし、この映画を観てから呉の方の地元愛の強さの理由が少し分かった気がしました。
これについては正解などないでしょうし、観る方の解釈もそれぞれでしょうからここでの言及は割愛しますが、「あー、呉いいね、なんかちょっとうらやましいね」という感情も芽生えました。

また、呉から見た広島感というのも垣間見ることができてちょっとだけそういう視点を意識して映画をみるといろんなことを発見するかもしれません。

twitterが熱い…

映画を観終わったら一度twitterで「この世界の片隅に」というキーワードでタイムラインを検索してみてください。
熱心に作品の魅力を発信しているユーザーさんがたくさん見つかると思いますが、その内容がとても面白いのです。
当時の町並みや人物の写真を持っていて「作品のこのシーンで出た景色です」と紹介してくれていたり、当時の位置関係から伝え聞いたエピソードなどを紹介してくれていたり、人それぞれの観点で様々な考察や掘り下げが行われていて作品への理解がより深まっていくと思います。
作り手が愛を持ってしっかりと作りこんで、その愛が作品の深みとなり多くの人に支持され、その支持者が深みをわかりやすくかみ砕いて発信することでさらに多くの人に伝わる形となる…
そんな「愛が作品の深みを増していく様子」をtwitterでたくさん垣間見ることができると思いますので鑑賞後はぜひいろいろと探してみてください。
こういう歴史映画を多くの人が気軽に補完・補足していける環境はインターネットの時代ならではの楽しみ方かと。

やっぱり広島の人には絶対に観てほしい

この作品は「戦争映画の皮をかぶった当時の人たちの日常生活を描いたドラマ」だと思っています。
当時の生活を知るという意味で歴史的資料としての価値も大いにあると思います。
…などと言うと、あんまり若い人には興味がわかないかもしれませんが、今は興味がなくても死ぬまでには何回か観たら楽しめるだろうなという映画です。
上映もそろそろ終わりそうなので迷ってる方はぜひ映画館へ!
今は興味がないなーというかたも10年、20年後には思い出して観てみてもらいたい映画です。
公式サイトでは用語解説もあるなどとても充実していますのでまずは公式サイトでの予習もOKかと!
http://konosekai.jp/

さらに掘り下げたい方に…

原作者であるこうの史代さんの別作品「夕凪の街 桜の国」が2007年に映画になっています。
こちらは原爆投下後の広島が舞台になっているそうで、さらに掘り下げてゆきたい方はこちらの作品も鑑賞してみてはいかがでしょうか?
(こちらは実写映画です)