1. ホーム > 
  2.  いきもの

賛否両論が入り乱れる?
神戸にできた劇場型水族館「atoa(アトア)」に行ってきた

2021/11/16 - いきもの, レビュー, 広島県外, 神戸しぶ

2021年10月29日に劇場型アクアリウム「atoa(アトア)」が神戸にオープンしました。
アートとアクアリウムを融合させた都市型の水族館ということで、普通の水族館とは一味違う光と空間の演出で大きな話題になっています。

各種メディアでは大絶賛されていますが、創刊カラフルならではのぶっちゃけ視点で紹介させていただきます。

[おわび]カメラの性能がよろしくないのと、他の方にご迷惑をかけない撮影を心がけた結果、あまり良い写真がありませんことをご了承ください。

水族館大好きの私はオープン情報を聞きつけ、新型コロナの影響も薄れて「県を越える移動の自粛」も解除されたのを見計らって、広島から神戸まで新幹線でひとっ走り行ってきました。

正直、atoa(アトア)については賛否が激しく分かれており、私自身もどちらかといえばネガティブな感情を持ってしまったのでこのことを記事にするのは悩みました。
しかし、多くの方が魅力的だと感じそうな点もあるので、できるだけ中立の立場でこのatoa(アトア)を紹介したいと思います。

ぶっちゃけ、何が賛否両論なのか?

私は当初atoa(アトア)に対して賛否が沸き起こっていることを知らずに訪れて、現場である種のモヤモヤを体験しました。
帰り道でネットの口コミなどを見てみると私の感じたモヤモヤが多く言語化されていました。
私見も含めて賛否をご紹介します。

賛の人:映え狙いで行く人は最高の映えスポットと感じる

賞賛の多くはこの施設が意図しているであろう通り、「最高の映えスポット」になるという点でしょうか。
正直、水族館を期待して訪れると人気水族館と比べ規模が小さく生体の展示も少なく、学習的展示意義も薄く感じられました。
しかし、光と影や音も使った演出には引き込まれるものもあり、いわゆる映えスポットを探している人にとっては満足の行くもだと思います。
オープン直後の今は特に「まだあまり人が上げていない映え写真を上げられる」という意味で満足度がさらに高まると思います。

否の人:動物に感情移入する人は悲しみやモヤモヤを感じる

最近の動物園や水族館は広々としたスペースでのびのびとしている動物を見せてくれるケースが多く、そういうのを期待しちゃうとがっかりする人も多いと思います。

私もどちらかといえばそういうのを期待していたのですが、狭い展示スペースで窮屈に展示されている動物たちにかわいそうと感じる部分が多くありました。

twitterでも話題になっていましたが、屋上にいるゴマフアザラシはかなり狭いプールでプールの隅っこに沈み込んでいてこれは流石にかわいそうだと思いました。
私が訪れた時は1匹だけいてそれでも狭くて窮屈そうだなと感じたのですが、他の日は2匹が狭いプールにいたようでネット上では「虐待に近い」という意見もありました。

この点は感情論抜きでお話ししないとややこしいことになるので一旦まとめましょう。
atoa(アトア)の運営は株式会社アクアメントさんというところがやっておられ、ここが動物取扱業に関する登録をしておられますので、生体に関する当たり前の知識や飼育方法はクリアされているんだろうなと思います。
私のような素人が見ると感情論が先に立ってしまいますが、専門家から見れば問題のない飼育&展示方法なんだろうなと想像します。
ただやはり、atoa(アトア)の展示方法を目の当たりにすると心にモヤモヤが生まれてしまうというのは事実でした。

atoa(アトア)「映え写真や体験の共有(難しく言ったけどデートとかね!)のために行くなら素敵な場所」であり、「他の人気水族館のような施設を期待するとがっかりする場所」なのかなと感じました。
「(展示方法の関係で)生き物がかわいそう」という以外の不満点に関しては、施設の方向性と来場者の期待値のアンマッチが原因かなと感じます。
atoa(アトア)の訪問を検討される方は、これらの点を考えてからご判断すれば「思っていたものとは違った」という不満は減りそうです。

賛否両論以前にとにかくなんとかしてほしいポイント

atoa(アトア)の入場方法については早急に改善しなければならないポイントだと感じました。

人の過密を避けるために、atoa(アトア)は時間を区切っての予約制となっています。
なので、入場の際はネット予約等で事前にチケットを購入することが勧められています。
チケットは購入と同時に支払いまで済ませる事前決済と、チケットの予約のみをして当日窓口で入場料を支払う現地決済があります。

なんらかの方法でチケットを予約して当日現地に向かいます。
まず、入り口についても案内不足でかつ多くのお客さまが混乱していて何がなんやら分からない…
なんかよく分からない長蛇の列が二つあるんです。
どうやら、一つが事前決済済みの列、もう一つが現地決済の列です。

どっちがなんの列だろうと迷いながら並んでいると、並んでいる人々から不満の言葉が発せられています。
「え?もうお金を払っているのに並んで発券しないといけないの?」
「何がなんの列かぜんぜん意味わかんない…」
「チケットを引き換えてきたんだけど、入場する人はこの列に並ぶの?」(違う)
などなど、不満と混乱の嵐でした。

混乱の一番大きな原因はチケットの発券についてです。
入場のためにチケット窓口でQRコード入りのレシートを発券しなければならないのですが、この工程に支払い済みも当日払いもほとんど関係ないんです。

チケットはこんな感じでペラペラのレシートです。
水族館とか動物園ってチケットのデザインもお楽しみポイントなのでとても残念

チケットはこの程度のペラ紙なので、今の時代で考えればネットで支払った時点で確認メールにQRコードを添付すればよかったのではと思ってしまいます。
(こちらでは想像の及ばないなんらかの理由があって今の方法になっているんだと思いますが…)

「事前決済の意味が全然ないじゃん!」

っていう悲鳴に近い声が並んでいる方の不満の大半でした。

近くのスタッフは窓口の人しかおらず、窓口の方は順番にひたすらチケットを発券しているので順番抜かしで窓口に質問するわけにもいかず確認の取りようもない状態です。
これ、普通の施設なら最低でも入口や列の最後尾に案内スタッフを一人配置すると思うのでここは早急に改善すべき点ではないかと思います。
(この日、たまたまスタッフの病欠などでたまたまこのような現場を目にしていただけならすみません…)

ちなみに、私たちは平日の14:30からの入場時間帯で、14時ごろに到着でしたが列に並んだのは15分程度でした。
様子がわかっていれば苦にならない時間ですが、状況がよく分からないまま並ぶには苦痛な時間でした…

やっと本題、atoa(アトア)の中の様子

私が一番感動したポイントが入り口や出口にある案内スペース(?)です。

受付は無人なのですが代わりにアバターが映し出されたモニターが置かれているのです。
この子に話しかけるとおすすめの見どころなどを館内を案内してくれます。
最初はAIかなんかかなと思ったのですが、完全に会話が噛み合ったので裏におしゃべり担当の方がおられるのだと思われます。

これ、人見知りの利用者にとっては人と接することなく案内を受けることができてとてもありがたいです。
海外でこういうアバターの裏でお体の不自由な方がお仕事をされているケースを見かけたのですが、このような仕組みが増えてくればお体の不自由な方でも働きやすい仕事の一つになりそうです。
コロナ禍でスタッフの感染リスクの軽減にもつながるだろうし、こういうアバターを介した遠隔案内はどんどん増えて欲しいなと思いました。

入り口に入ってすぐにSNS等でよく見かけるこのエリアが飛び込んできます。


定期的に光の色が変わって水槽を幻想的に映し出すので、入って5秒くらいは「わ〜!すごい!最高かな!」って思うのですがけこう狭いスペースで「ああ、これだけか…」ってなります。
多くの方が水槽そっちのけで映え写真を撮影していました。
もちろん、この写真のために端っこから撮影している私も含めて。

施設としてはこんな小さなスペースが2Fと3Fに合計5つくらいある感じです。(1Fは出口、4Fは屋上)

無機質=オシャレと解釈されるような展示スペースです。

おさかなの案内は水槽の上の方に書かれているので、身長150センチ以下の方には読みにくいような水槽もあります。
お子様には読めなさそうな高さのものが多くありました。

水槽の直径は決して大きくなく、意図的なのかはわかりませんが屈折の関係で真正面以外のお魚はかなり歪んで見えちゃいます。
水槽の直径が小さいということは向かい側までの距離も短いので反対側で観察している人とバッチリ目が合います。
海藻や岩場など自然なものが何も入っていないお魚だけの水槽も多くて水族館というより培養実験の施設かなんかに見えちゃいました

なかにはこういう水族館らしい水槽もあります。
展示方法のメリハリといったところなのかも知れません…

入場人数を制限している関係で極端に過密になる場所は少なかったです。
ただやはり、映え向き施設ということもありおのおの趣向を凝らしながら動画やお写真を撮っている方が多く人数の割に歩きにくい感じがありました。
自分を映して解説しながら動画を撮影している人(youtuber的な人?)もいたりして、なんかこの人の配信に映り込んじゃうんじゃないかと思ってヒヤヒヤしました。
写真だけならまだしも、こういう場所でしゃべりながらの配信動画っぽいのはなんだかなーと思っちゃったのですがこれはもう旧世代の感覚なのかもしれません…
そんな旧世代にとっては居心地が悪い…

展示物が全体的に小さいです。

ちょいちょい心に刺さるオブジェが飾られています。

海外の方が喜びそうな和風のスペースです。

プロジェクションマッピングかと思いきや、足元には生きているコイさんが泳いでいます。
コイさんたちの上を歩けるガラス張りの床のような感じになっています。
水族館には「水槽を叩いてはダメ」という鋼のルールがあると思うのですが、この上をお子さまが走り回ったり足ダンしてたりというのも見かけて、コイさんたちのストレスはどうなのかなと心配になりました。
ただ、見た感じ怯えたり逃げたりというようには見えなかったので目で見た印象よりもけっこう深い場所を泳いでいるのかも知れません。
小さなお子さまが激しく喜んでいたのはこことのちに紹介する巨大水球かなと思いました。

カメラの限界で分かりにくいですが、中に金魚が泳いでいます。
和風スペースの展示は主にコイと金魚です。

色々な色で見せている金魚鉢がずらりと並んでいます。
酸素のブクブクは出ているものの、金魚さんが水面で口をパクパクしていて、見ていたお客さまからは「酸素が足りないのかな?」「おなかすいて餌を待っているのでは?」みたいな会話が聞こえてきました。

この和風スペースにはこういう光の滝みたいなものもあって綺麗でした。

人が入り込まないタイミングでの撮影が難しかったので3秒だけ動画でお楽しみください。

おそらくここの目玉展示であろう巨大水球です
自分の想像よりは小さかったけど巨大水球です。

ここも光や音で雰囲気を変えながら見せてくれるのですが、時間帯によるのか周期的なものかチカチカ激しい光の演出がある時がありました。
お魚さんの目は大丈夫なのかな?
お魚さんに光が届きにくい水槽になってるのかな?
残念ながらが私は専門家ではないのでよくわかりません。

別に近づいて観ても構わないのですが多くの方が壁際から引きでこの水球を撮影していたのでなんとなくの暗黙で近づきにくい、近づいて観てる人も雰囲気に気づいてささっと離れちゃうみたいな感じでした。
なんだかメンテナンスが難しそうな水槽だなとも思いました。

施設内にはゾウガメが歩いているという事前情報がありましたが私は会えなかったです。
「床が滑ってゾウガメがすごく歩きにくそうだった」という話を聞いたので、もしかしたらゾウガメさんのストレス軽減のためにお休みさせていたのかもしれません。(それがいい)

屋上の様子

オリジナルフードなどが楽しめる屋上(4F)スペースは私の想像の半分くらいの大きさで、そこにペンギンやアザラシの展示スペースも一緒にあります。
小さい面積で無理して展示しているようにも見えてしまい、それにより人間の休憩スペースも少なくなっているのでゆっくり休憩や食事ができる感じではありません。

オリジナルフードはお昼には半分くらいのメニューが売り切れていて、レジも一つしかないので長蛇の列になることも
飲食スペースの面積から考えたら妥当なのかもしれまえんが、ここをお目当てにする方も多そうな場所だけに色々残念でした。

左:アクアリウムバブルスカッシュ(680円)
右:カワウソ抱きつきポテト とろーりチーズ(550円)

「全種類食べるぞ!」って勢いで挑んだのに気になっていたものの大半が売り切れで購入したのはこの2点のみでした。

アクアリウムバブルスカッシュは甘くない強めの炭酸水に甘さ控えめの大きなまるっこいゼリーが入っているもので、ストローと肺活量を駆使して上手にゼリーを崩しながら飲み込むドリンクです。
これはなかなか美味しくてコンビニとかで普通に売ってたらけっこうリピートするかも!
オプションでアルコールも入れてもらえるのですがアルコールも合いそうだなと思いました。

カワウソ抱きつきポテトは揚げたてではなく煮物くらいふにゃふにゃになっていました。
このふにゃふにゃ感はトッピングのチーズにはよく合うので意図的ならすごいのですがたぶん揚げ置きで時間が経っただけだと思われます。
カワウソの容器は紙カップの周りをスリーブがついている感じなので、スリーブだけを思い出として持ち帰ることができます。

カワウソたちの展示スペースの隣は展望台のようになっています。
人が少ない時に撮影したこの写真でみると広そうに見えるかもしれませんが、実際は立ち止まってあちこちで写真を撮っている人がいるので体感としてはけっこう狭苦しく感じました。

屋上は屋根がないので雨の日はびちゃびちゃになって座るところがほとんどありません。
私たちが行った日も通り雨の影響でベンチは濡れていたのですが、手持ちのハンドタオルで拭いてから無事に座ることができました。
ということで、ハンドタオルは用意してから行ったほうがいいかもですね

口コミではロケーションがいいというお話でしたが、神戸にはもっとロケーションがいい場所があるのでここが特別かと言われるとうーんって感じでした。
水族館のついでに景色を楽しめるという意味では嬉しいところ。

水族館の出口(再入場不可です)に大きなフードコートがあるので、雨の日やフードの売り切れが予想される午後の来場は屋上でのお食事は避けた方がいいかなという印象でした。

知っておいたほうがいいこと

水族館としては規模が小さいので屋上でフードを買って少し休憩したとしても滞在時間は1時間程度なので、旅行で回る方はチケットの発券も考慮して1時間半くらいの予定を割り振っておけば余裕だと思います。

お子様も楽しめるとは思いますが、どちらかというと20歳前後の若者向け施設だと感じました。
見た目のおしゃれさ重視なので小さなお子様には水槽が高いのではと感じる箇所も多々あります。
また、映え目当ての来場者も多いのであちこちで道や展示物を塞ぎながら自撮りをしているのでなかなか居心地が悪いです。
展示物に近づいてじっくり観察したくても、展示物を背景に自撮り動画を撮っている人もたくさんいてじっくり観察もしにくいです。
(自分達も撮影してたので、これは批判的な意味ではなく撮影をメインに楽しむ方が向いていそうだなという意味です。)

光の演出等が綺麗という点を目新しさと感じる方もいるかもしれませんが最初に述べた賛否の通り、水族館を目的とするなら他に優れた選択肢が多くありそうです。
映え写真を目的とするならここは一つの選択肢になりそうです。

大人2,400円の入場料にふさわしい体験ができたかという観点では、個人的にはう〜んって感じですね…

まとめ

水族館や動物園といえば年間パスポートがあるものですが、atoa(アトア)には年間パスポートがないようです。
これは施設運営側も「ここに2回も3回も来る人はそうそういないだろ」と踏んでのことかもしれませんし、もしかしたらそんなに長く営業する予定ではないのかもしれません。(水槽以外はあまりお金がかかってなさそうに見えたので)

水族館を期待すると期待はずれに感じる人が多いのではと思い、特に生き物の気持ちを受け取りやすい人にとってはあまり良い思いをしないかもしれません。
私も一番強く感じたのは生き物がかわいそうという気持ちだったのですが、この漠然とした「かわいそう」には自分に生き物に対する正しい知識がないというのも理由の一つだったかも知れません。
アザラシさんをはじめ、海の生き物たちの展示方法が本当にかわいそうなものなのか、きちんとした知識を身につけるために勉強してみたいと思ったのは大きな心の変化で、そのきっかけになったのは良い点だったかも知れません。(語弊があるかもしれませんが…)

一方で、変わった写真を撮りたい方や映えスポットを探しているような方にとっては多くの選択肢の中の一つになるかもしれません。
ただ、こういう消費型の栄えって写真がSNSに溢れてしまうとありがたみがなくなっちゃうんですよね。
一次消費が完全に終わっているであろう2〜3年後にatoa(アトア)がどんな感じになっているのか気になります。

あくまで個人の見解ですが、atoa(アトア)は水族館というよりも「映えの消費」のための場所と考えた方がしっくりきました。
この「映えの消費」に命を雑に使っているように見えるのが議論になるポイントなんだと思います。

もしもatoa(アトア)に水族館という肩書きがなくて「水族館をイメージしたアート空間で、おさかなは全てプロジェクションマッピングかロボットで生き物はいません」みたいな感じだったら個人的にはめちゃくちゃ興奮して楽しんだと思います!

いろいろと考えさせられる点があった施設でした。

atoa(アトア)

兵庫県神戸市中央区新港町7番2号 神戸ポートミュージアム2F~4F

入園料 大人(中学生以上)2400円  ※お子さま料金などは公式サイトをご確認ください
営業時間 10:00〜21:00(年中無休)
その他 日時指定入場制となっているので事前予約がおすすめです。

掲載情報は執筆時点の情報を抜粋したものです。
正確な情報・詳しい情報などはatoa公式サイトをご確認ください。

ほかの記事も読んでみてね!